あの夏の出来事。
8月14日、僕は「君」に誘われて、公園に出掛けた。
どうやら「君」は、黒猫が好きなようだ。
「ねぇ、~。夏は好き?」
「君」は黒猫を撫でながら、僕にそう聞いた。
「うーん・・・好きなところもあれば、嫌いなところもあるかな・・・!」
「ふ~ん・・・私は嫌いかな」
少し悲しげな表情を浮かべた。
「どうして?」
この一言の意味に、「君」は全く動じない。
「んー・・・暑いし、寒い場合は重ね着とかいっぱい出来るけど、夏はそういうことが出来ないじゃない?まあ要するに暑いからってことかな!」
「そう・・・なんだ。」
本当に?
黒猫が動き出した。
僕は危険を感じた。
「あ、待って、猫ちゃん!!」
だってその猫・・・不気味なんだよ。
血のように赤い目で、僕と「君」を見つめているんだよ。
「~!その猫は危ないよ!!」
そんなことを考えていると・・・
「君」が赤に変わった信号機を渡っているではないか。
「~!!トラックがっ・・・!!」
「え・・・?」
僕の目の前には、鉄がさびたような匂いの、赤い液体が広がっていた。
「げほっ・・・ぐ・・・がはっ・・・!!」
ここにいるのは「君」じゃない。
ついさっきまで話をしていた「君」じゃない。
「どうして?」
どうして黒猫だけ助かっているの?
どうして「君」は息をしていないの?
「最後まで・・・言えなかった・・・。助けられなかった・・・。ごめん・・・ごめんね・・・」
少し我儘な態度も、
照れた時にすぐ殴る癖も、
なびく髪の匂いも、
全部、
全部・・・
「僕は「君」が大好きだった。ヒヨリー・・・」